ボロアパートから徒歩三分 古ぼけた街灯が照らす 大きな桜の横に立つ 小さなコインランドリー 小雨がパラつく昼下がり 憂鬱が頬を湿らせる 反応の悪い自動ドア 四苦八苦してると ガラス越しに見え隠れ 見慣れない人影 苦笑いする女の子 耳たぶまで真っ赤な僕は動揺して口 走った 「イイ天気、デス、ネ」 さっきより強くなった雨が笑ってる みたいだ 苦笑いする女の子 三度目でやっと慣れてきて 音楽の話を振ってみた テレビじゃ聞かない名前ばかりで 反応に困った… ふいにイイ匂いがした 隣に座り直して 苦笑いする女の子 イヤフォンを半分こにしちゃって 優しい歌を一緒に聞いた 「ステキナ歌、デス、ネ」 このまま時間が止まったらいいんだ けどなあ 止まったのは乾燥機 それから二人は 何度も話した 知らないジャンルに 詳しくもなった 45曲目の 渾身のバラード そこで音楽は 途切れてしまった 君の好きな歌を聴くよ 洗濯物が乾くまで 「ドコニ行ッタノ、デス、カ?」 秋が過ぎて 冬を越えた 結局逢えないまま あの日の続きを聴いてる 小さなコインランドリーは 一年後に取り壊された 崩れてく建物 桜の木の下 泣きそうな顔で 苦笑いする女の子