春は来ていない 何も見ていない 溢れる花にも 背けるわたしも 白いひとひら 世間が口を揃えてる 花の集まりレンズ向けて 此方はやる足取り移る並木 勿体がない? 実感がないんです 空の冷蔵庫 床のダンボール 誰もいない部屋で笑った 300キロ向こう遠い街並が こんな恋しいと思ってなくって 春は来ていない 何もみていない 溢れる花にも白い企み 微笑んでるように唆してくるの 簡単に負けては堪らない この街の春 朝寝坊も疲れたから 一つ電話を掛けましょう 「此方花は蕾膨らむころ どうか元気でいてください」 今年は見られず終わってしまうな 車線にはみ出す染井吉野 おまえは帰りを待っているのね ぐっと大人になったわたしのことを だから故郷へ早く着けるように 目にする花から白い魔物が 気を抜いた隙に驚かしてくるの いまでも震えて挫けそう この街の春 怖がってばかり考えがない 寝起きで急いでだらしがない 父さん母さん わたし、 この街にいても笑っていたいです 電車が開いて目前で閉まる 吹き飛ぶ花にも白いひとひら ほんの一瞬の春風の悪戯 簡単に負けてはいられない つよがり 涙が染み込んだ 東京の春