染まる前に透けてしまいそうだ–– この街に生きるわたし。 君がいない喧噪のただなか、 しかたないと立ち尽くした。 気がつかず、傷つかず…… なんてことはなくて、 春の匂いに痛む。 フィルムリールを回して、 戻れない日を映して–– 遠ざかってゆく君の 温もりがなくても。 懐かしめる海が、鮮やいでた花が、 いつかのかけらたちが まだここにあると思っていたい。 帰り着いた部屋はまっさらだ–– 味気なくてなじめないや。 塗りつぶす色彩もないまま、 どうでもいいと嘯いたんだ。 じゃれあって、なれあった、 セーラー襟の頃。 君はもう進んでいくだけ? フィルムリールを回して、 戻れない日を映して–– 美化しているだけなんて、 言うまでもなくても。 思い返していくたび、 擦り切れていくんだろうね。 変わりきれないわたしを 許していたいだけなのにな。 フィルムリールを回して、 戻れない日を映して–– 遠ざかってゆく君の 温もりがなくても。 懐かしめる海が、鮮やいでた花が、 いつかのかけらたちが まだここにあると フィルムリールを回して、 戻れない日を映して–– 美化しているだけなんて、 言うまでもなくても。 思い返していくたび、 擦り切れていくんだろうね。 変わりきれないわたしを 許していたいだけなのにな。