そうだ、そんな事もあったっけ お前に初めて会った時 お前の顔より先に私が見たのは あの畳の上に揃えた両手だった 白くて細くて美しい指だった それはしなやかでどこまでも静かだ った その時私は心ひそかに決めた この女性(ひと)と絶対結婚しようと あれから50年たち 懸命に私は貧しい愚痴をたたいた それでも貴女はいともつつましやか に 優しく私を見ていてくれたっけ ありがとう、ありがとう 金色に輝け50年! ありがとう、ありがとう 金色に輝け50年! そうよ、そんな事もあったわね 貴方と二人で登った比叡の山 あの時の貴方の大きな黒い靴と 力強い後ろ姿がうれしかった それから30年目の秋でした 初めて私に買ってくれましたね 紫水晶のささやかな指輪 今でも私のささくれだった左指で笑 う あれから50年たち 貴方の瞳は深く悲しい瞳になりまし たね だからこそ貴方はいともたやすく 強く弱く私の肩を抱いてくれるので すね ありがとう、ありがとう 金色に輝け50年! ありがとう、ありがとう 金色に輝け50年! 金色に輝け50年!