~♪~ 気の病に犯された夢遊病者のように 幾日も四畳半に閉じこもりっぱなし 引きちぎった電話線を てめえの首に巻きつけ 『死にてえ』などとお茶目に かわいぶってみた やっと手に入れた “花の東京”200坪の土地 適当な家をおっ建てた 隔離されてる俺の部屋の窓から みごとな咲きっぷりの 赤と白の花々たち ひと群れの 太い木々たちが織りなす花々は 黙ったまんま腐る俺を いやしてくれる そして俺は不安と恐怖から とき放たれる 我が家の庭先に小さな畑を 妻と三人の子供と耕し造った いっしょに汗をかきかき種をまいた 『しあわせの花が どうか咲きますように…』と お祈りしてからひとつめの夏の終り やっと花を咲かせた 天高い向日葵(ひまわり) 俺たち東京 五人家族の土の上から 灰色の空に垂直に向かう 五本の向日葵たち 明日、俺 40回目の誕生日だ 花を見上げる俺たちは なぜか黙っている 瞳たちよ、このまま真っ直ぐ はるか天まで届いてゆけ ~♪~ やがて咲いたばかりの 背い高ノッポの向日葵も 朽ち果て、しおれ、 うなだれ、腐り、土にかえる その時花の命の短いはかなさを 天を仰ぐ我が子は 初めて知るのだろう “希望”という名の裏側の絶望に 叩き落され死にたくなる時もあるさ いつか家族で見上げた 空の高さを思い出して 人より傷つき 優しく厳しい人生(みち)を ひたすら願うのだ 許してやろう、 よっぽど辛かったんだろう ほっといてやろう、 よっぽど痛かったんだろう ほめてやろう、 よっぽど悲しく淋しかったんだろう 妻よ、君もいつの間にか 三人の母親になった 君の立つ台所からは しあわせが見えるかい 庭先で餌をついばむ 雨にぬれた五羽のニワトリを 老いた俺の親父の背中が 必死で追いかけてる きっと遠い昔、君も少女だった ささやかな暮らしでも 大切な人がいたはず 今、君の寝室に立てかけてある 死んじまった 君の親父の写真から 何か聴こえるかい? 悲しい瞳で子供たちの しあわせを語ろう 悲しい耳で子供たちの 優しさを語ろう そして口は、 ただただ物を喰らう為だけに 努めるのだ 悲しい瞳で子供たちの しあわせを語ろう 悲しい耳で子供たちの 優しさを語ろう そして口は、 ただただ物を喰らう為だけに 努めるのだ ~♪~ しあわせの小さな庭で 天まで届け向日葵たち