南へ下る道路には避難民があふれ 僕は10トントラックで 大阪へやって来た インターチェンジは いつも雨の匂いでいっぱい だから僕はやせながらぬれて立つ それはほんのささいなことで 僕は酔っぱらっていたのかも 知れないんだけど 僕がやって来た夜 御堂筋はレース場で 心斎橋はこの世の人だまり その中を真夜中にうろつく僕には今 何の地位も将来も 約束されてはいない 南へ下る道路には避難民があふれ 僕は10トントラックで 大阪へやって来た インターチェンジは いつも雨の匂いでいっぱい だから僕はやせながらぬれて立つ スポーツ新聞はいつも 阪神のことばかりかきたてている おおげさな競馬の報道は 貧乏人をくいものにするし うたいたかったけど そんな場所もなくて 僕はいつも求人広告を 持ち歩いたんだ でも行ってみると いつもだまされてしまう 尼崎の鉄工所へ行った時なんか たった千円しかくれないし その上命の保障もないんだ 南へ下る道路には避難民があふれ 僕は10トントラックで 大阪へやって来た インターチェンジは いつも雨の匂いでいっぱい だから僕はやせながらぬれて立つ 友だちもいつか 名前だけになってしまうことを 知っている いつのまにか 手をとり合うだけのエゴイズムと すり変わってしまうんだ 長髪を風になびかせる 自称ヒッピーたちでさえ 新しいコートが なかなか肌になじまないこと 知っている ものすごくたくさんの広告が いろんなスタイルを要求するけど でも家をでることだけが 自由じゃないと思うんだ あれはいけない これがいいのさ でももう結構 僕は誰が素敵な奴かを知っている 南へ下る道路には避難民があふれ 僕は10トントラックで 大阪へやって来た インターチェンジは いつも雨の匂いでいっぱい だから僕はやせながらぬれて立つ 何もかも関係なくなればいいと 思うことがある とても眠たい朝 僕は大阪駅に立たずんでいたんだ そうさ 誰もがあせりすぎているんだ 走って行く人 ころぶ人 くつを忘れた人 かかとがかけてしまって歩けない人 朝から晩までラッシュアワーだ まるで恋をする勇気もないまま 僕もあんたも うらみ合いをくり返している 夜にはひま人が金と麻薬を持ち歩く もし君が宿なしなら 夜中にうろつかない方がいいよ ましてやポケットに 百円ももってないなら へたするとやくざとおまわりの 思いのままになってしまうよ 誰かが言ってたっけ? お前は気楽に暮らしてていいって じょうだんじゃないや 何が気楽なもんか いつまでたったって 落ちつくあてもなく まるでいくじがないまま まだフラフラしている 一年中わびしくてやりきれない町 それが大阪 でもそれがいいのかもしれないなと 思う時もある クリスマスにあの娘に 赤ちゃんが生まれるんだって とても小さな女の子で みんなでかけたんだ 顔のぞきこんで 男か女か 今じゃその娘タバコも ラリることもやめたんだ みんなでおいわいして あげたいんだけど その娘大阪の女の子なんだよ 南へ下る道路には避難民があふれ 僕は10トントラックで 大阪へやって来た インターチェンジは いつも雨の匂いでいっぱい だから僕はやせながらぬれて立つ