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乾杯

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  • 1973.01.25
  • 6:08
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歌詞

今だにクリスマスのような新宿の夜 一日中誰かさんの小便の音でも きかされてるような やりきれない毎日 北風は狼のしっぽをはやし ああそれそれって ぼくのあごをえぐる 誰かが気まぐれにこうもり傘を 開いたように 夜は突然やって来て 君はスカートをまくったり くつ下をずらしたり おお せつなやポッポー 500円分の切符をくだせえ 電気屋の前に30人ぐらいの人だかり 割り込んでぼくもその中に 「連合赤軍5人逮捕 泰子さんは無事救出されました」 金メダルでもとったかのような アナウンサー かわいそうにと誰かが言い 殺してしまえとまた誰か やり場のなかったヒューマニズムが 今やっと電気屋の店先で花開く いっぱい飲もうかと思って いつものやき鳥屋に するとそこでもまた店の人たち ニュースに気を取られて 注文も取りにこない お人好しの酔っぱらい こういう時に限ってしらふ ついさっきは 駅で腹を押さえて 倒れていた労務者には さわろうともしなかったくせに 泰子さんにだけはさわりたいらしい ニュースが長かった 2月28日をしめくくろうとしている 死んだ警官が気の毒です 犯人は人間じゃありませんって でもぼく思うんだやつら ニュース解説者みたいに情にもろく やたら情にもろくなくて よかったって どうして言えるんだい やつらが狂暴だって 新聞はうすぎたない涙を 高く積み上げ 今や正義の立て役者 見だしだけでもってる週刊誌 もっとでっかい活字はないものかと 頭をかかえてる 整列した機動隊員 胸に花をかざり ワイセツな賛美歌を口ずさんでいる 裁判官は両足を椅子にまたがせ 今夜も法律の避妊手術 巻き返しをねらう評論家たち 明日の朝が勝負だと どこもかしこも電話は鳴りっぱなし 結局その日の終わり とりのこされたのは 朝から晩までポカーンと口を開けて テレビを見ていたぼくぐらいのもの 乾杯! 取り残されたぼくに 乾杯! 忘れてしまうしかない その日の終わりに 乾杯! 身もと引き受け人のない ぼくの悲しみに 乾杯! 今度逢った時には もっともっと狂暴でありますように 夜が深みに はまりこみ バセイだけが生き延びている おでことおでこ こづき合ってのんべえさんたち にぎやかに議論に花を咲かせている ぼくはひとりすまし顔 コップに映ったその顔が まるで仕事にでも来たみたいなんで なんだかがっかりしてしまう 誰かさんが誰かさんの 鼻を切り落とす 鼻は床の上でハナシイと言って泣く 誰かさんが誰かさんの 耳を切り落とす 耳はテーブルの上で ミミシイと言って泣く 誰かさんが誰かさんの 口を切り落とす 口は他人のクツの上で クチオシイと言って泣く ぼくは戸を横にあけて 表に出たんだ するとそこには 鼻も耳も口もない きれいな人間たちが 右手にはし 左手に茶わんを持って 新宿駅に向かって 行進しているのを見た おお せつなやポッポー 500円分の切符をくだせえ

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