土曜日 晴れ お昼過ぎ 板の間に降りそそぐ日ざし 「ただいま」の声に食卓へあつまる ──お土産、あるよ お父さんはどら焼き 妹はみたらしか三色団子 あたしは決まって栗まんじゅう それからお母さんは、 いつも豆大福だった ──ミカもどう? すすめられたけど あたし豆のごりごり、 好きじゃないような気がして いらないよって首ふった そしたら、もう食べられなくなった なんだ 豆、ほくほく 甘塩っぱくて、やわらかくて…… どうしてあの時あたし 一口もらわなかったんだろう 同じものはいつだって手に入る でも ──ミカもどう? 差し出されたあの豆大福は 二度と味わえない どうしてあの時あたし この時間は永遠に続くだなんて 信じて疑わなかったんだろう いらないよ、って首ふった 土曜日 晴れ お昼過ぎ