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Double Cast

Track by少女病

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  • 2010.08.14
  • 11:24
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歌詞

そこは王都の大劇場 夜毎描かれる至高の舞台 歌声に乗せて奏でられる物語 表現者は誰もが目指す その場所を、その確固たる聖域を 神に選ばれた若きヒロイン二人 【Double Cast】 背が小さくて地味 けれど、 歌い出すと表情が一変する少女 華やかで嬌艶な 舞台に立つために 生まれてきたようなもう一人の少女 同じ場所を目指しお互いを 高め合ってきた親友 二人は信頼しあっていた けれど周囲に囁き合う 「真にヒロインに相応しいのは?」 嫌でも耳に飛び込んでくる雑音 私なんて、と自虐的なフィー どうしても自信が持てずにいて それを聞いて怒りだすリィサ けれどもどこか悲しそうで 珍しくケンカ別れのように 二人は離れ家路についた 『少女は翌日、 そのショックの影響からか、 熱を出して寝込んでしまう。 幸いな事に、 そういう時のための ダブルキャスト。 予定とは違うものの、 その日はリィサが 舞台にあがることになった。 舞台のクライマックス。 ヒロインの見せ場である独唱。 老朽化した照明が運悪く、 その頭上に落下して……。 静かに聞き入っていた観客は、 眼前に降り注ぐ 惨劇に悲鳴をあげていた』 裸足のままで 熱にふらつきながらも 親友の元へと走り出す少女 いつもは優しい仲間達 誰も目を合わせてはくれない 膨張する不安 抑えきれない恐怖 けれど意を決して辿りついた病室 そこにあったのは 傷ひとつないような 綺麗な横顔 「ひどいわ、 みんなで私を驚かせようとして。 本当にびっくりしたわ……。 大したことはなかったのね!」 『安心した反動ではしゃぐ少女に、 医師である老婆は 言い辛そうに語る。 目立った傷はみえないけれど、 頭部にあたったせいで意識が 戻らないということ。 ただ運が悪かったと。 医学ではどうしようもない。 魔女の力でも 借りればあるいは……と非現実的な 慰めをかけさえして。 少女は親友に覆いかぶさり、 狼狽して泣き叫んでいた』 美し<<声>>が<<音>>が 今は悲しくかすれて 私のせいで、 と苦悩して塞ぎこんだ―― 泣いても喚いても朝は訪れる 舞台に上がろうとするフィー けれど体の震えはとまらず 何度やっても どうしても、どうしても 歌を歌うことができない…… 仲間達は責めもせず少女を庇い 誰もが雇い主へと嘆願してくれた 演目の変更を 穴は我らが埋める、と 理解ある貴族は慈悲深くも首を 縦にふった それだけではない 片翼を失くし傷心のヒロインに しばしの休息を 彼女はその日から演者ではなく 皆を陰から支える仕事に回った 『1日たりとも 見舞いに訪れない日はなかった。 けれど、その顔を見るたびに、 少しずつ。 ほんの少しずつ、 親友がやつれていくのを 感じていて。 あるいは、 少女自身も同じように生気を 失っているのかもしれない。 数年の月日が流れて。 すっかり舞台上から離れ、 小間使いとして日々を過ごす少女。 ある夜、 休憩をとぼんやり 椅子に腰かけていると、 舞台から突然歌声が聞こえてきた。 舞台上には、 あの頃のままの親友の姿。 彼女は美しく歌いながら、 少女を舞台に引っ張り上げる。 その続きを歌うように無言の視線で 促されるけれど、 やはり歌声はでなかった』 「ねぇ、歌ってよ。 私の好きな、あなたの声色で」 邪気のない笑顔 何も変わらず 誘われるように唇を動かす あの頃と同じように歌えている 声が出る 心が覚えている 体が歓喜している コーラスを紡ぎゆくリィサ ようやく思いだした 彼女が思い出させてくれた 【笑って? ほらね、やっと気付いた?】 私は【あなたは】 歌うことが好きだ! いつだって 横に立って 時に争いながらも Ah… 寄り添いあって歌ってきた ダブルキャスト 重なる声 今、繋がる感情 二人に距離なんてなかったね 誰よりお互い 認め合っていたから キミの ah… 歌を【あなたの声を】 『演目の一番の見せ場である 独唱に差し掛かる。 親友は口を閉ざし、 真剣な顔で少女を促す。 戸惑いながらも滑らかに歌い上げる 少女』 「なんで忘れていたんだろう。 歌うことって、 こんなにも 素晴らしいことだった……!」 「この舞台の ヒロインはやっぱりあなたね」 「何を言ってるの。 ダブルキャスト。 二人がヒロイン、でしょう?」 「ありがとう。 でも、私はもういかなきゃ……」 「あなたに出会えてよかった。 歌い続けて、ずっと――」 その言葉を残してリィサは 姿を消した 混乱しながら つまづきながらも 彼女が眠っていたはずのベッドへと 駆ける けれど、辿りついたその時には 既に親友は息を引き取っていて…… いつだって横に立って いつまでも競い合って ずっと二人で歌っていける そう思ってた…… 『空に響くように、フィー。 どうか歌い続けて――』 『彼女が心臓の鼓動を止めたのは、 ちょうど最後に 言葉を交わしたはずの瞬間で。 親友は、 死の間際まで少女のことを 想っていた。 責任という重い十字架を背負い、 歌えなくなった少女を』 「歌い続けて、ずっと……」 『その親友の笑顔を胸に、 少女は再び舞台に立つ。 比類なき歌声は、遠い国まで。 そして、 彼女がいるはずの空の果てまで響き 渡っていた……』

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