生温い風が頬を撫でるように ふわり触れた手の汗ばむ 夜半の夏 煙草の煙が鼻を擽るたび 幼い私を少し背伸びさせる 花火が打ち上がるまで 少し離れたとこで見つめていたい はだけた浴衣姿が 光のシャワーより綺麗に映り込む 波打ち際 二人の不揃いな足跡が さざ波に流されて想う 泡沫の恋だと ほろ苦くて淡いこの恋と対照に 甘い甘い綿菓子のような 口づけを夢に見る 明け方 寝惚け眼でゆらり 気怠げに火を付けた貴方が 今にも消えそうなほど 儚く何よりも愛しくて 溶けない魔法の氷が 纏わりついて動き出せないよ あと一歩さえ踏み出せたなら 夏の終わり 藍色に染まり 止まないひぐらしに紛れて 声を枯らし名前を呼んでも 貴方は気づかないのでしょう 花火が打ち上がるまで 二人寂しさ埋めるように求め合い 実らない果実の種が 心の隅っこで芽生えてる