大道芸人は路上をめざす けっして舞台になどあがらない 炎天下だって 氷点下だって 衣装はいつだっておんなじだ 赤い着物で踊り狂えば 世界中の車が交差点で ブレーキを踏む 飛行機に乗ってパリまで行く だけどオランピア劇場に 出るわけじゃない 名前もわからない街角に 自分の劇場を建てるのだ 大道芸人の天使の言葉は 世界中で使える共通語なのさ 雨の降る日には部屋にいて 残った小銭を数えてみる 数える小銭がなくなれば 路上でまたゼロから躍るのさ 大道芸人という職業が あってもいいじゃないか 職業が一つ消えるのは悲しいよ タクシーに乗ったら 路上までと言おう 飛行機会社は 架空のチケットは売らないだろう 大道芸人はとっくに先回りして 雲海で芸を披露している ビル街に涼しい夕立が降る 花ビラが包帯のように ほどけはじめる