きっとふたりで、 どこか遠くの方まで飛んでゆけると思っていたんだ。 寝室の窓、カーテンを閉じよう。 瞼の奥でさ、旅をするんだ。 双眸が閉じ、濁りだしたら、 終わらない夜が迎えに来る。 白く、ぬるい、夜が、やっと。 夢の中のぼくらは、月の裏側で暮らした。 蒼過ぎた眠りの中、ふたりは寂滅の春を待っている。 また誰かが始まり、終わっていくのを、 象牙の塔からずうっと見ている。 温みのある忙しない脈動たち。 きっとどこかで羨んでいた。 ここで見える景色はもう、 幻燈のようにくすんでいた。 欠けた月の黒から浮かんだ、現の世界。 ぼやけていく。 夢の中のぼくらは、月の裏側で暮らした。 蒼過ぎた眠りの中、いつまでも幸福の中で、 優しい終わりを待っている。