「東海(とうかい)の神、 名は阿明(あめい) 西海(せいかい)の神、 名は祝良(しゅくりょう) 南海(なんかい)の神、 名は巨乗(きょじょう) 北海(ほっかい)の神、 名は禺強(ぐきょう) 四海(しかい)の大神(たいじん)、 全知全能(ぜんちぜんのう)の 力を以(も)ち、 百鬼(ひゃっき)を避(しりぞ)け、 凶災(きょうさい)を蕩(はら)う 我、常に月将(げっしょう)を 以(もっ)て占時(せんじ)に加へ、 日辰陰陽(にっしんいんよう)を 見る者なり」 荒ぶる森羅(しんら)の魔物達よ 羅ごの夜に目覚めん 掲げる桔梗(ききょう)の星の上に 開かる光と陰の門 闇より出(い)でたる 魔性を祓(はら)い去る 光放つ 十二神将(じゅうにしんしょう) 我が足に集い 呪詛(のろい)を込めて飛べ 此(こ)の世の和を結ばんが為 光は闇を裂き 風は雲を散らす 万象(ばんしょう)の力よこの両手の 力と変れ 渦巻く暗雲(くらくも)天を殺し 現る凶事(きょうじ)のうなりか 地獄に這(は)いずる蟲の如(ごと)く のたうつ哀れなる怨霊 舞い踊る邪気に 朱(しゅ)の霊符を放ち 冥土(めいど)送りの唄を唱う 戦慄(わなな)く魔魅達を 喰らう式神ども 骨を食み血肉を啜(すす)れよ 光は闇を裂き 風は雲を散らす 万象の力よこの両手の力と変れ 今は昔、京の都に 人ならぬ力を操る者有り。 古井戸より冥界へと行き来し、 死者と語り 物怪(もののけ)とたわむる。 数多(あまた)の式神を 使役(しえき)し、 満月の夜には魔物に跨(また)がり 天を駆けたという。 其(そ)の者を人は、 陰陽師(おんみょうじ)と呼ぶ。 闇夜に綾(あや)なす 魑魅魍魎(ちみもうりょう)の群れ 冥府の藻屑(もくず)と引き裂かん 轟(とどろ)く雷鳴その叫びの果てに 紅蓮(ぐれん)の火を上げる地獄へ 還(かえ)れ魔の民よ 二度と目覚めぬ様 結んだ印に情けを込め 鎮(しず)まる魂 黄泉(よみ)の底で眠れ 哀れなる性(さが)を忘れ去り 光は闇を裂き 風は雲を散らす 万象の力よこの両手の力と変れ