はじまりはつよい風 珍しい底冷え 玄関に生えたように立ちつくす 一人の女 赤い少女は つながりにつながれ まぼろしのように 点滅 している 女は言うんだ 口寄せのように 知るはずもない そのタイトルを 女は指さす 冷え切った指で 一枚のレコードがそこにあるはずと 海の風が吹く 潮くさい風を その男はいつも 纏っていたんだ 自由さが好きで 憧れてもいた その心中を 知ることもせず その身にヤマイを 抱いていながら 奔放に生き 消えていった 行くあても決めず 漂うかのように その男はいつもそうだったかもしれ ない 顔を伏せて泣く 砂が目に入る 夜ごとわたくしをかりたてるあの声 繰り返し漏れてくる サラサーテのささやき あなたが持っていると 確信してるのです 赤い少女のあどけなき落書き 知るはずのないレコードのタイトル ツィゴイネルヴァイゼン あなたがもっていると 確信してるのです 睡蓮は夜 光るんですの ぎらぎらと花びらが 目を覚ましてくる 赤い少女の長い夢の中と 同じ色をしてぎらぎら光るのです あの日の海から 風と砂浜を 少しばかり借りて語りかけるのです どんな思いかわからないまま のこされたわたくしを さいなんでいるのです うわごとのようでいて はっきりしている レコードのタイトルを繰り 返しなぞる まるであなたが わたくしを責めるかの ように聞こえる サラサーテの盤 顔を伏せて泣く 砂が目に入る 夜ごとわたくしをかりたてるあの声 繰り返し漏れてくる サラサーテのささやき あなたが持っていると 確信してるのです 赤い少女のあどけなき落書き 知るはずのないレコードのタイトル ツィゴイネルヴァイゼン あなたがもっていると 確信してるのです 顔を伏せて泣く 砂が目に入る 夜ごとわたくしをかりたてるあの声 繰り返し漏れてくる サラサーテのささやき あなたが持っていると 確信してるのです 赤い少女のあどけなき落書き 知るはずのないレコードのタイトル ツィゴイネルヴァイゼン あなたがもっていると 確信してるのです
