教科書にスコアを隠す 机の下、指で歌う 起立の号令 廊下駆け あの子のサックスが響く 三度目の夏 オーディションだから 僕等は音楽で戦うのだ 僕の番 心臓のテンポ狂う 先生の前に立つ 息を吸う いつも通り 大丈夫 ねえ、勝ちたいんだ 夏が知りたいから こんな音楽でも良いかな 僕の泡が音符になって 夕波が満ちていく 感情綾なし暮れる校舎 今は僕だけのホールみたい 明日へ響けと息を吸った 深く 長い夏を求めて 完全下校時刻3分前 先生が僕等を急かす 上履きを脱いで 滑る廊下に月明り あの子の笑顔 帰り道、鼻歌アンサンブル 二人でステージに立ちたいね 夢を語れば 夜が熟れる 家に着く また明日、部室で。 先生は夏が続く生徒を呼ぶ 僕の名前が呼ばれた 他人のものみたいで 空っぽの返事をする あの子の名前は呼ばれないまま ああ、 「ごめんね」は違うと分かって その背中に零したの 二人の夏が知りたいのに マウスピースが音を割る 真夏の窓からロングトーンが滲む あの子に届いてしまう 心は覚えたての息で 藻掻く 夏って残酷だ 課題曲が決まった日 お互いの譜面に 金色のペンで 描いた約束は 消えかかって 二人の夏みたいだ ついに、コンクール ネクタイを結ぶ 舞台裏、あの子の声 「きっと皆なら大丈夫」 静まったステージへ ねえ、勝ちたいんだ 夏が知りたいから 心を打てと音を吐く 4分間に染みる僕等の 物語が続くように 表彰式ただ明日を 想う 祈る 叶わなくて 今日が僕等の最後の夏 またね またね なんてないね 大人になって 夏を数う 僕は今も「ごめんね」 のまま 二人で歌った道を歩く 今もこの曲覚えているかな