通り過ぎてゆく赤信号 まだ遠い国道沿い 気怠げなラジオだけが話し相手 君を知った日よりずっと前に 覚えた夏の予感は どうやら今日のことを知ってたみた いだ 辺りは君の望み通りに べとつく潮風に浸かって行く 遠く遠くの街へ意味を連れて 僕は軽く左眼を擦った 形の崩れた雲 灰色 淡い空の斑ら模様 いつも撮り溢したファインダー越し 君はもういない 無くしたのは僕の中 思い出したのは君の中 壊さないで いつの間にか 裸足の夜に君を想う 写真機はもう取りに帰らない 深く浮かぶの 波の隙間に 君は多分左眼を濡らした 夕凪 永久の眠りにつくような 静寂と涸れた慕情とで 愁哀 朧げな今日だけは忘れない どうしても どうしても 水際 君の両の足がつけた跡は 繰り返す中に呑まれて 風浪に傾く陽と君の横顔 有り得ない 労しても 労しても どっと疲れた体に 微睡んだ空気が襲う 左手には君が欲しがってたシーグラ ス 一瞥した君の横顔 それは夏の幻 僕は軽く左眼を擦った