自転車でバイト先に向かう 今日も遅刻しそうだ まずい 店長のベトついた顔が 脳裏をかすめる 川沿いの急斜面を下ってく ここで加速するしかないな 突然目の前におばあさんが出てきた 急ブレーキ バランスを崩し 転がり川へと落ちた すぐに泳いで岸へと向かおう だけど何故か足が動かない 川の底から無数の腕が伸び 僕の足を掴んで離さない 邪魔するものを振り切って 息をするしかない それしかない 沈んでしまえば浮くことない ああ冷たい ああ冷たい 捨てられるものを捨て切って 脱出するしかない けどできない 終わってしまえば泣くことない 涙もない 涙もない 溺れる寸前のところで僕は 助けられた あのおばあさんに おばあさんは昔 水泳の選手をしていたらしい 偶然にも びしょ濡れの体でバイトに向かう 制服に着替えてタイムカード押す 少しの我慢で時間は過ぎる それの繰り返し それの繰り返し 見えない無数の腕が今も 僕の足を掴んでくる だけど見えていないと 思い込まなきゃ やってられない 別の現実を詰め込むのさ スマホを開いて親指動かす 新しい出来事を探している 何が正しいのかわからない 馬鹿でいいと開き直る 邪魔するものを振り切って 息をするしかない それしかない 沈んでしまえば浮くことない ああ冷たい ああ冷たい 捨てられるものを捨て切って 脱出するしかない けどできない 終わってしまえば泣くことない 涙もない 涙もない