襟を正し 声なきままに うつし世に咲く夜の篝火 誰が願う面を帯びて またひと夜 灯に消ゆ 鏡の奥 映らぬ疵 笑むたびごとに崩れ落つ 艶火のごと 我は燃えぬ 愛を餌とし命を削る 唯 美しかるを願ひしのみ 終を知りて咲き誇る 薬の薫り 染みし褥 紅の下に膿む膚を覆ふ あの人もはや戻らずに 名を喚ぶ声 掠れゆく 指の震へ 白粉 落ちぬ 笑みの面 崩れ果つ 艶火の果て 誰にも見せず 爛れし貌の奥にあるもの 愛を欲し壊れし身なれど 美しささへ捨てられず 「綺麗にて候ふ」幾度も言ひて 誰ぞ一人に信じられたくて されど夜は無常にして 我が貌も名も闇へと消ゆ 艶火の夢 風に舞ひて 誰の記憶にも残らぬまま 願はくは逝くその刹那 美しかりしあの日のままに 火 絶えたり 夜は吞みこむ 艶の影 今は いづこ…
