骸の面を耳に下げて 朧の月を嗤ひて翔ける 灯籠 蹴れば山神眠り 怪しき宵に 術ばら撒く ひとり寝る森に燈す声 朽ちた祠に名もなき夢 「鬼の仔ゆえぞ」と言の葉隠し 空なる胸に風ばかり 騒げや妖 孤り舞ふ 耳に揺れる骸の笑み 縁を喰らひて今宵も跳ねる 帰る家無く月を抱く 鵺の聲に眠りを盗み やまわろ引きて童ら泣かす 「愉快なるかな」と髪を揺らし 真はただ 空蝉の影 翳ある瞳に映るはいつぞ 黄泉の彼方か忘れし母か あゝ 名も呼ばれぬ夢ひとつ 風に千切れて還らぬまま 夜叉の如く 笑みを裂け この戯れも 孤の業なれば 誰かの声に振り返りつつ 揺れる飾りに願ひ込めし 骸の面をそっと撫でれば 誰かが云ふかその名を 「寂しき子」と抱きてくれん 叶わぬままに夢と朽つ
