午後九時、 時化た缶コーヒー手にして。 窓の外、暗がり、君の家に。 気怠気な暴風雨。 予報士は「明日未明まで続く」と、 昨日から。 『こんな僕も明日には消えたいな』 一週間前から段ボールは 君の部屋に居着いた。 願わくばどうか二度と現れないで。 明日の朝、別れは過ぎ、 「大丈夫だよ」 とさえ言わない僕は、 誰を想おう。 応えてくれ。答えてくれ。 僕は何処へ行けばいいのだろう。 わかってるのでしょう。 ねぇ。 午後九時、 時化た缶コーヒー手にして。 窓の外、暗がり、君の家に。 気怠気な暴風雨。 予報士は「明日未明まで続く」と、 昨日から。 『こんな僕も明日には消えたいな』 (すいこんでいく、 ながされていく、 ひかり、とおく、みえる、きみの、 あめはやまぬ、ひびわれてく、 かんじょうさえもうつすと。) 「還る場所がもう無いの。」 ギターの音が水に溶けた。 僕と君を遠ざける雨が、 眼が醒めても止まない… 霧の中に。闇の中に。 煌る蛍光灯のその色が、 貴方の総て。 聲は遠く、風は止まぬ、 乱れる髪掻き分けた、 その手が最後の記憶。 台風前夜のあなたが見えたんだ。