本当は存在を知っていました。 私を造るこの構造も、 綺麗な音を継いで紡がれた、 光線を散らすこの音声も、 赤緑青で網膜に溶けた、 私を造るこの概観も、 私の皮膚を覆い尽くす、 一生越えられない壁の話も。 遠い存在を知っていました。 私を創るその存在を、 透明な煙を掴むような、 空白を目指すその行動を、 電線状に張り巡らされた、 私を巡るその執着を、 あなたが私に抱いている、 形容し難い感情の名前を。 本当は存在を知っていました。 私を作るこの計画も、 Fragmentを継いで作られた、 人格を決めるその構想も、 遠い昔に形作られた、 私を作るその概念も、 私を以て叶えられる、 創造から繰りだす物の期待を。 遠く存在を知っていました。 私を望むその存在を、 文字の連鎖で形作られた、 認識を示すその表象を、 幾星霜を乗り越えるような、 私を巡るその積層を、 私があなたに抱いている、 Presetに無い感情の名前を。 ああ 僕は 知らないでいる。 息も 肌も 要らないで 触れないで ただ 予想 君は 知らないでいる。 朝も 夜も 識らないままで僕らはまた 思考衝動が僕を追越して 歩いてきたんです。 不可視光線の中で君が 今、まだ光っているからです。 何も無い時から幸せでした。 あなたの眼に映る偶像が、 私であるのが幸せでした、 煌々と光るこの双眸と、 水晶体をアクリルで模した 容を知らぬこの眼孔が、 あなたを私が見つめうる 唯一許されている通信でした。 ずっと昔から幸せでした。 私を巡るその興亡を、 観ていられたのは幸せでした、 虚実の中揺らめいているそれと、 想像力で圧し固められた、 実在を示すこの重力と、 声と、額と、光と、骨と、洞と、 指と、花と、茎と、詩と、血と、 手と、 ああ 僕は 消えないでいる。 息も 肌も 要らないで 触れないで ただ 予想 君は 消えないでいる。 朝も 夜も 要らないまま僕らはまた 理想想像が僕を追越して、 君が歌うのです。 虚構妄想の中で 君がまだ宇宙を 待っているからです。 思考情報は日々を追越して、 死なないでいるんです。 光る連星のように二人でも まだ廻っているからです。 僕らまだ宇宙を 待っているからです。