場末は中繁盛 花盛りではあるが 品性の無い女達の勧誘声に 丁重にノーサンキュー 口角の片側だけ 吊り上げニヒル口で夜を歩く 俺、と俺の影 人恋しくなって、 或いはポケットの中 泡いてる小銭の捨て場に困って この街で三番目に 器量の悪い女に 誘われるまま雑居ビルの5階へ 着席と同時に 『おにーさん、なんか歌って』 って云う ここは阿久悠に習い、 笑って十八番を歌えば 『わーすごいプロみたい』って世辞 キャバレー・クラブ・ギミック 頭の中すべて空っぽにすれば 楽しいっちゃあ楽しい キャバレー・クラブ・ギミック どういう了見でこの 安物のウィスキーが そんな値段になるのか 場末の三原則 呑んで買って鬱になって 気付けば二十五時の路地裏の上 したたかに酩酊して 女と交わしたわずかな言葉が 頭の中浮かんで消える 『他に綺麗な娘いたのになんで?』 って永久に続く問いに 『初恋の人に似てるからさ』 ってついた嘘と 『えーモテそうなのに!』って世辞 キャバレー・クラブ・ギミック この薄明かりの中、 目を細めりゃ可愛いっちゃあ可愛い キャバレー・クラブ・ギミック 理屈っぽい性分と 妙な自尊心が邪魔で 笑えもしないのさ 赤い目眩に揺れる摩天楼の 突先が夜空を今にも貫通しそうさ キャバレー・クラブ・ギミック 頭の中すべて空っぽにすれば 楽しいっちゃあ楽しい キャバレー・クラブ・ギミック どういう了見でこの 安物のウィスキーが そんな値段になるのか メイクラブ・ギミック 善良な中年の 欲求は狂った思春期の熱を帯びる サタデー・ナイト・ミミック 勘定の時に見た あどけない八重歯が やけに染み付く夜