赤と青の区別も付かない アルコールで満たされた夜 されど窓を見て萎える朝 照らされた世界が黒く見える 扁桃腺の奥から 見たくないよと叫ぶ声 点と線 繋ぐから ペンを持って笑ってた時へ 変わってしまったわけではない 気づいてしまっただけなんだ 白を黒と 赤を青と 触れてしまっただけなんだ なのにこちらまで染まっていく 老けてくたびに 何かに染まる 暗い暗い色に 元には戻れない 走り回った廊下の温度さえ 思い出のどこにも触れられず 昨日まで確かだった場面が 薄い膜の奥に置き去りになる 掴んだはずの景色ほど 手の中で粉のように崩れて 辿り着いた現在だけが 妙に重く沈んで見えた 知らないうちに 言葉が丸くなり 胸より先に 頭で分かるようになった あの頃はもっと 無造作に進めたのに 計算ばかりが 足を止めていく 選んだつもりなんかじゃなく 触れた景色が変えただけで 青を緑と 朝を夕と 見えてしまった途端にもう 戻れない形になっていく 年を取るほど 知らぬ色を拾う 淡いはずだった日々も 今では濃すぎる 昨日の感覚が 今日はもう合わなくて 息継ぎの仕方すら ぎこちなくなる でも戻る場所は どこにもないから 擦り切れた地図でも 歩くしかない 変わったわけじゃなく 削れただけの僕でも まだ残っている 未完成の部分を 握りしめながら これからを選んでいくよ 老いていくほど 曖昧になっても 濁らないままの いくつかの感覚で 最後まできっと 進める気がした
