夏の終わり、脚を縮め、 川べりから噎せるような潮風に、 きれいに編んだ髪をいたわるように 、 うみが、ちかい、あのひとが、 ちかい。 ぬくもりも、動物たちの行列も、 いつも彼らはどこかに物語の結晶を 隠しているし、 胸の中はじけて消えていくサイダー のように、 何歳になっても(原色の)きらめぎ とどめたい。 諦めに寄りかからず、 現実に損なわれず、 九月の見る夢も、無数の哀しみも、 どうしようもなく美しい。 ほかに生き方を知らないし、 繭から糸を紡ぐように、 思い出に題名を付けて暮らしたい。 その目隠しをとったって、 あなた自身は、見透かせない。 椅子を失くして、もう待ち飽きた。 あなたは聖書を波に抛り、 今水平線の向こうから、 夜の幕があがる。