忘れかけていた カラタチのトゲの ぬくもりと痛みを 咲かずに舞い落ちる 碧白い蕾は 今も空白のまま泳いで 透明な風に引き裂かれて 開いた花はすぐに色褪せる 翳した声の下で 消えていくあの日の情景 揺れている昨日を睨みつけ 生き急げば 変わっていく風を躱して 眩むような日差しを待っていた 春は移ろいでゆくだけ 雨に刺されても 雪に圧されても 決して折れはしない いつかの名前は 思い出せぬまま 残るのは棘と痛みだけ 翳した声の下で 消えていくあの日の情景 揺れている昨日を睨みつけ 生き急げば 変わっていく風を躱して 眩むような日差しを待っていた 春は移ろいでゆくだけ