晩鐘が裂いた宵の静寂 言葉は朽ちて祈りと成る 雨垂れが赤黒く泪し 何処往き棚引く紫煙さえ打ち消す さざめ泣く誰そ呼ぶ蝉時雨 抜け殻と知りながら 全てが崩れた其の日も 俺は神など祈らなかったのに 其ノ十字は何故 妹の頭を潰したのだ? 煉獄に咲いた曼樹紗華が ひらりと散りて空ヘ昇る 十二階の跡 嘲う月へ伸ばした掌には 触れもせずに 飾り纏う皮など爛れ堕ち 地獄の亡者の仮面を奪い合う 嗚呼何時迄 喜劇を演じれば 幕は降りるというのか? 「全ては許されるのよ」 か細き指でロザリオを握り締め 「だからね、私は生きてる」 もう動かない其の手から零れ落ちた 神よ 貴様の喚くこれが救いなら 神よ 貴様の蒔いた イノチトハナンダ? 聴こえるのは風の音だけ 首に垂れる逆十字が 音を立て抜け堕ちるまで 祈り全て灰に還す 晩鐘が裂いた宵の静寂 屍踏みつけ闇を穿つ 十二階の跡 嘲う月を見上げることはもう 無いだろう 晩鐘が泣いた 誰が為に晩鐘は哭いた? 祈り朽ちるまで裁きを待つ
