1文字も 書けない日が1日でもあったら それが俺がラップを辞める日だと 思う 「歌詞が降りてくる」 なんて現象は都市伝説 歌詞は探求の先にのみ宿る マリノからトラックが送られてくる 名曲の予感 時は遡りメモの中にヒントを探す 頭の中の引き出しをいくら開けても 見つからないものが メモの中にはこれでもかと 詰まっている 日常が大きな画用紙だとしたら そこに切り取り線を入れる事が 作詞で それらを繋いで結び直すと さっきまでは無色透明だった 画用紙にも ちゃんと様々な色がついていた事に やっと気付ける 俺にも韻を踏む為に ラップをしていた頃があって まぁ、正直それも楽しいし 別に否定はしないけれど 多分今の俺は当時の俺が レベルアップした姿で 言いたい事を伝える為に韻を 踏んでいる ラップをしたいと ラップにしたいじゃ 肉巻きおにぎりと 肉入りおにぎりくらい違くて 前者のラッパーはすぐにバレる 何か聴いているのに いまいち内容が入ってこない 歌詞が薄くてビートに負ける 俺の中の化け物が制作をやめない どんなに疲れていても 不思議と歌詞を書いてしまう現象 レコーディングは歌詞を 書いてからでないと 出来ないから理論上俺が死んだら 幻の名曲がこの世に溢れる “聴かれないうちは全て名曲” そんな当たり前が 俺ははらわたが煮えかえるくらい めちゃくちゃ悔しいんです 1verse1小節1文字にだって 秘めている 名曲の予感を確信に 「煙草を吸いました」 これでけでは曲にならず大事なのは その歌詞を聴いてヤニのついた壁や 灰皿いっぱいの吸い殻を 想像出来るか ディテールにこそこだわる そうじゃ無けりゃ ラップで歌詞を書く必要が無い とは言え結局生でみたものが1番で 旅行先の広大な大地は歌詞にすると 霞むし 彼女の思わず笑ってしまう寝言も 歌詞にすると笑えない ラッパーとして1番悔しい 瞬間はそこにある 想像よ踊れ 今までに無いほどに自由な表現で 踊り狂え ビートに飲み込まれず フロウに誤魔化されず お前の行きたい所へ 真っ直ぐに羽ばたけ こんな事を言ったら元も子も 無いけど 俺は俺が書く曲が1番好きなんです もうラップなんてやめようと 思ったその時に 背中押してくれた曲はやっぱり WAKABAでした 「流行らないだろうな」そんな台詞 捻り出したたった1文字で 浅はかなものに出来る 俺の人生を マリノの人生に乗せているんだし 簡単に流行ってもらってたまるかと 思い 机に向かう どこを切り取っても パンチラインの応酬 まるでヘビー 級の殴り合いのような1曲を 滲むインクは血液となり俺を 削るならば 少なくとも死んでから売れる事は 無い