前歯

歌詞

なんでか、 ドラッグストアで買った缶ビールは 体にいい気がする様な なんでか、 前歯が無い方が 素直に笑っていられる様な なんでか、 身分証なんてない方が肩の荷が 下りた気がする様な なんでか、 失った全てが自分の背中を 押してくれる様だ 今年一番の熱帯夜は夏が過ぎてから 分かる様に こんな口元の前歯ですら失ってから 価値が分かる様に 満たされているのに何かを望むのは 結構な贅沢ではあるけど 満たされいるのに何も 満たされていないと思うことは 傲慢でもある でも、 自分を確認する 余裕なんてないくらいに時代に 喰らいついていく アーティストとか詩人なんて言葉は 使いたくはないけれど 表現する上で腹八分目は 諦めに値する いつでも空腹で朝目が覚めた瞬間は 空白で 今日一日を自分で彩って行きたい 心を蝕む病は命を見失い 体を蝕む病は命と向き合う様に 苦し紛れでも最後の一小節まで 終わらせない なんでか、 ドラッグストアで買った缶ビールは 体にいい気がする様な なんでか、 前歯が無い方が 素直に笑っていられる様な なんでか、 身分証なんてない方が肩の荷が 下りた気がする様な なんでか、 失った全てが自分の背中を 押してくれる様だ 心を蝕まれたとしてもまた 一小節から始める 缶ビールのプルタブの開封音が スタートの合図 相槌ばっかの人生のBPMは95 つまりは聴いてる様で聞いてない でも、 生きてるようで 生きてないよりはいい 冷凍庫の底の方で凍ってた 思い出さえ息を吹き返すリリックだ もともと無かったものを探し続けた 弊害か もともとあったものを無くした時に これほどまでかと膝をついたんだ もともとあったものさえ 無くしてしまう自分は もともと無かったものを 手に入れることなんて出来ないと 落ちに落ちたけど 重量の影響か底の方には言葉が 重なり合う様に待っていて 今日またこの曲で色んな 方々に会えた 2023/8/10 会社は夏季休暇前の最終出勤日 僕は仕事終わりに歯医者の予約を 入れていた ４年前に前歯を折った時と同じ 歯科医院で 緊張しながら診察室に入ると ４年前と同じ先生が対応してくれて 「また前歯折った?」 僕は多分ビールジョッキにぶつけて 折った気がしたけれど かっこつけて 「マイクにぶつけて折りました」 と言った 本当は 『生きがいにぶつけて折りました』 と言いたかったけれど ステージと違って目の前に 自分の弱点だけを照らすライトが 当たっている診察台で そういう抽象的な表現は 求められていないと思った 「まだ音楽を続けてるんだね」 と治療を始め 治療後「また折れたら来なさい」と 何かを無くした時にしか 会うことのない方々が もともと自分に無かったものを差し 出してくれた気がした 「また折れたら来るので、 先生もお元気で」 この前歯の様に色んな方の手を 借りて補強して生きていく もともとの自分が 強くなるよりもあなた方の手を 借りて生きていく なんでか、 ドラッグストアで買った缶ビールは 体にいい気がする様な なんでか、 前歯が無い方が 素直に笑っていられる様な なんでか、 身分証なんてない方が肩の荷が 下りた気がする様な なんでか、 失った全てが自分の背中を 押してくれる様だ なんでか、 ドラッグストアで買った缶ビールは 体にいい気がする様な なんでか、 前歯が無い方が 素直に笑っていられる様な なんでか、 身分証なんてない方が肩の荷が 下りた気がする様な なんでか、 失った全てが自分の背中を 押してくれる様だ