パン屋の角曲がればバターの匂いが 爆弾のよう クロワッサンの層がサクサク鳴る 夢を見ては起きる パスタの湯気が仲間たちを 祝福するのに 僕だけ招待状に「ご遠慮ください」 の文字 ラーメンの行列に並ぶ友達の背中 僕は「いいよ気にしないで」 と笑顔で待つ でも心は小さな嵐を抱えている あのスープの湯気すら甘美な 毒になる 小麦と私の距離感 近づけば危険、離れれば寂しい 「ちょっとだけ」と願うけど それが最も危険な橋渡り ピザパーティーの歓声が夜を突き 抜ける チーズの糸が引くたび胸が痛む 唐揚げの衣も、カレーのルーも 気づけば小麦がそっと忍び 込んでいる 「じゃあ 米粉にすればいいじゃん」って声 そうさ、代替えはあるけれど 食卓の真ん中に君がいないと どこかテーブルが空虚に見える 小麦と私の距離感 愛してるけど触れられない 「ごめんね」と心でつぶやいて 米のパンにバターを塗る だけど悪いことばかりじゃない 選択肢は広がり、工夫も増える グルテンフリーの仲間と乾杯して 新しい未来を一緒に描く でも時々夢に見る 窯から出たばかりのパンの膨らみ 「もう一度だけ」なんて心が揺れる それでも振り切って笑うんだ 小麦と私の距離感 切なくも愛おしいライバル 触れられぬからこそ響くリズム 今日も歌って前に進む