こんな世界にはサヨナラ 未練一つないのさ 貴方の匂いが残っている 湿った夜の風が雨を告げた 震ゑて居た 人を殺めたのだ 行き先も教へずに此の足が 街外れの廃屋に連れて来た 握り締めた右手の中の輝きが 壱匹の惨めな野犬を狂わせた 五感を縛り付ける恐怖に然らば 睡魔に溶けた瞼 微睡と雨垂れと 募る憂いが紡いだ幻想 こんな世界の不条理をどうか 奪っていけ 円をなぞって浮かんだ薄い目に 綻んだ感情は 痛みになって涙になって 頬の上、伝っていく 花街ネオンライトを反射しては 栩栩然と舞っている 胡蝶みたいに翅を開いて 誰も触れらんない夜を願ってさ こんな世界にはサヨナラ 未練一つないのさ 貴方の匂いが残っている 此の広い世界に独りぼっち 誰か私を連れ出して欲しい 閉塞感に耐ゑる日々は辛い 彼が指輪盗んだ訳知りたい 飾り氣無いワンピース身に纏い 汽車を待つ駅のホーム 明日は離れた街、両親の御墓参り 私らしく在れる日 窓を伝う雨粒がやっと一つになって 流線を書いた それが辿る航路であれかしと 願うだけ 春風 遠い感傷を運んでいく 寝惚けた体温で 「何処へ行こうか?」 「何をしようか?」 他愛無い話をしよう 眦トワイライトを反射しても 醒めない儘なんてずるいじゃないか 今更なんだ 解けてしまいそうな夜を結んでいく 手繰り合う程 想い合う程 解けてしまう様な恋だから 結目のない物語を描いている 東の空が仄かに白み初める 円をなぞって浮かんだ薄い目に 綻んだ感情は 痛みになって涙になって 頬の上、伝っていく 暁 重い瞼を透過したら 貴方が待っている事を願った 解けた蝶の夢想は香一烓 を残したの こんな世界にはサヨナラ 未練一つないのに 夜明けは等しく来るのだ サヨナラ、残した花も枯れていく 貴方の匂いが残っている