ふたりだけの線路上 時間の存在も揺らいだ夜 工場街の煙がただ色めいていた 君に似合うように 冷たくなった風と 花咲く街灯り 「このままずっと」なんて 言えなかった 使い古した現在が 過去に呑まれるのが さびしかった 冷たくなった指で 触れたその笑顔は 僕よりちょっとだけ 冷たかった そう記憶した あまりに静かで 胸の泣き声が煩かった 伸ばしたその手が 世界の全部と信じていたんだ ふたりで盗んだ夜を もう返さなきゃな 陽の光が僕等を 引き離す合図だったんだ ひとりだけの線路上 揺られている車両の隅っこで 思い出す回数が減っている 君の言葉が 酷く多いと気付く 切り捨てようとしたら 寧ろ 繋がるから 忘れないために 忘れたんだ 憶えてたいのは 言葉ではなくて あの日の痛みだ 朝陽の正しさ 街の雑音が煩くって 「また会えるかな」 の答えがちゃんと 聞こえなかったんだ 振り返る君はそっと やさしく笑ってた 未来が眩しくたって それだけあればよかったんだ 夕映えが時間制限だった あどけなさの中 もうちょっと 話していたくて 「帰ろっか」が嫌だった もう いつまで傍に居たって 構わなくなったのに 君が居なかった あまりに静かで 胸の泣き声が煩いんだ 繋いだその手は ずっとだって 信じていたんだ ひとりで返した夜は もう明け始めた 陽の光が僕等を 引き離す合図だったんだ あの日の答えはずっと 判らなくていいから 大人になれた時も この歌 思い出していて