丸い球 下から上へ落ちる 瀕死の私の 最後の足掻き 同じ速度で ぶつからないように泳ぐ それだけのことが こんなにも難しいとは 嗚呼、路地裏の魚は 呼吸する術すら持たず 孤独の海に溺れて やがては朽ち果てるだけ 群れからはぐれてしまった 魚みたいだ 右往左往して立ち尽くした挙句 泳ぎ方を忘れてしまった 嗚呼、路地裏の魚は 誰にも知られることなく 打ち上げられて干からびて 誰かの餌になる 未だ温もりを知らぬ 皮膚はとても過敏で 誰かが拾い上げてくれたなら 火傷してしまうだろう 未だ何者でもないまま 人知れず死にゆく 路地裏に打ち捨てられた魚など 誰が目を留めようか 誰が足を止めようか この私の無言の叫びなど 誰が耳を貸そうか 嗚呼、路地裏の魚は 何一つ残すこともできずに 一筋の泡を吐く 声にならぬ叫びは 空に高く舞い上がり 水面にそっと浮かび 束の間揺れては 泡と弾け飛ぶだけ 路地裏に沈む魚たちよ