雨が止んだって 風が止んだって きみを連れて飛び立てる 羽根はないんだなぁ… 下校のチャイム 下駄箱数センチ 震える肩、叩けなくて泣きそうです 君はいつだって 大きく見せたくて つま先が 震えたまま背伸びをする 哀れアヒルの仔 泣き声でスワンソング 前髪の隙間から、世界睨んだ 『いつも見ていてくれてるよね、 組もうよ。一緒に、戦って…?』 君とふたり、歌う。 何度も。走り出す。 夕立ち、 いつかの帰り道。 昂り、声さえうわずって、 僕ら、走り出す。 少女はふわり手をとって、 くるくると回った 芝居がかった発音で、 「別人になろうよ。」 教室では知らんぷり、 心で手をつなぐ。 放課後作戦を立てて、 他人演じたり、ね。 雨が止んだ道 風が吹き去って あなたの前髪が 涙をはねた 敵も定まらず 撃ち放つきみの物語は はじめから破綻していた きみの手を掴む それでも味方だと 朝礼台、拡声器 息を吸って--- うろこ雲が遠ざかる。 1年、1年と過ぎる。 きみは髪を切った。 顔合わすこともなくなって、 僕ら石ころになる 遠い日、きみは 当時を思い返し アルバムを指さして いない僕に向け、こう言った。 「白鳥が 写ってるね。」