「あれは?」「阪神」「あれは?」 「JR」 「あれは?」「阪急」 すごいな 今まで電車であると 分かることに感動していたのに 種類の違いまで分かんねんな 「これは?」 「近鉄奈良線」 その電車は レコーディングスタジオに 向かうのに利用している電車であり その移動時間を有意義に過ごすため 前日に中で読む本を見繕ったりする しかし息子にとっては その移動自体が有意義なことなのだ いつも「のりたいね」 と話している図鑑の中の電車 「本物に会いに行こう」 ホームに電車がやって来た時 いつも使っている電車のはずやのに 息子と同じテンションで 「わー近鉄奈良線や!」と思った 移動手段と目的 何を見るかでなく 何と見るかで 見え方は変わるのだと改めて知った 初めてでんしゃを見に行った 記憶とも相まってか 昨年の夏 家族で花火を見に行った日のことを 思い出した 花火を見に行って あまり花火を 見なかったことなんてはじめて 俺は夜空ではなく そこに咲く彩と同じ色に染まる 横ばかりを見ていた 目的の電車に乗るも どこか息子はそっけなく 挙げ句のはてに 乗ったばかりにも関わらず もう降りたいと口にした いつかの大井川鐵道での旅行を 思い出す 好きなキャラクター 達に囲まれながらも 息子はこちらの 期待ほどははしゃいでいなかった しかし その夜 図鑑の中の近鉄奈良線は 「のりたいね」から「のったね」 に変わり 「たのしかったね」 とうれしそうに振り返っている ひょっとすると 子供にとって"楽しさ" は人みたいな形をしており 時に人見知りのようなことを 起こすのかもしれない これからレコーディングに行く時は きっと申し訳なさも混じる 「お父さんだけずるいね その分 ええRecしてくるからね」