『この世の果てで詠われる、 あらかじめ失われた魂の連なり。 それは玲瓏な森に住まう、 心優しい預言者の記憶』 「嗚呼……白い揺り籠は 新月の下眠るのに。 きっと、 新たな生を祝福して 揺らされることはないのだ」 いつもならばノイズ混じりの曖昧な 言葉だけ その日だけは不思議とクリア。 鮮烈なメッセージ 緋色の目の預言者たる少女が 視たものは この世界の終焉を象ったイメージ 静かな森の中で慎ましく 幸せに過ごしていた 突然授けられた言葉は 酷薄な音節となり…… 「時のはじまりから、 終わりの先をいく者よ。 わたしには明確に視えてしまった。 緩やかな世界の破滅が」 空はやがて落ちるだろう。 「ねぇ、 あの鳥って平和の象徴だって 言われてるんだよね? 見て、落ちてく。 落ちていくよ……?」 琥珀色の柵を越えていく清廉な少女 穢れのない白を脱ぎ捨て、 想い人に寄り添う 聖痕に手をあてて、 もういいのだと笑った 散逸する自己欺瞞、畏れるは音節 不確かに降り注ぐ安らぎに 幾度も身を任せた 終わりをただ受け入れるには 一人では耐えきれないと…… 「理想郷の園から、 終わりの先を知る者よ。 遺棄される世界に残された生に、 願わくば甘い果実を」 声はきっと届かぬだろう。 『夕闇に溶けゆくeustacy、 繰り返される自己暗示、 終焉の音階、砕け散る物語』 「人が暗闇を怖がるのは、 真実を見てしまうのが怖いから。 だけど、 目を閉じていても何も 変わらないことを、私は知ってる」 「少女の精神は 徐々に破綻していった。 想い人はいつだって笑顔で 包んでくれる。 けれど、 預言者として視てしまったものは、 少女の心を壊して……」 溶け合っても繋がっていても心が 軋んでいく 救いのない未来の記憶 食い違う歯車 剥離する衝動と、不規則な嘔吐感 森の中響くのは、幾千の鎮魂歌 沈む私を支えてくれてる 貴方の温もりさえも なぜか突然恐ろしくなり 無意識にナイフを刺した 鮮血に塗れた、 言葉もなく崩れる彼は 絶望も愛情も終わりもすべて、 受け入れるように優しく 笑っていた…… 「嗚呼……白い揺り籠は 新月の下眠るのに。 きっと、 新たな生を祝福して 揺らされることはないのだ」 空はやがて落ちるだろう。 『新たな生が知る初めての感情は、 “絶望”』