傘を閉じれば 水玉の夜 路面にゆらめく 街の断片 光前寺の 銀杏並木 黄金の絨毯 雨に溶けてく 数えきれない 記憶の粒が 肩にこぼれて しみこんでゆく 季節が違う 風が通り過ぎ 私の横顔 なぞってゆくの 中央アルプス 雲の向こう 見えない頂が 私を呼んで 光の帯が 駒ヶ岳駅 誰かの足音 残してゆくの 石畳みには 苔の歴史 時計の針が 逆に回って すり抜けてゆく 昔の面影 触れられないまま 通り過ぎてく 小さな祈り 雨粒の中 傘を開けば 星になって こぼれ落ちてく しずくの夢が 明日を映して 散ってゆくの
