いつも通り3分の1日は 記憶のない暗闇の中 1度目のアラームとはまだまだ 仲良くなれそうにない 反対に飛び起きた時の記憶を 思い返す 母親が部屋に飛び 込んできたあの3月11日 手術後の動くベッドの上 あとは全部寝坊 はじまりの唄 令和2年最初の大嫌いな月曜日に 新宿駅で彼が宙に浮いた真実は 記憶の彼方に 瞬く間に広まった彼の必死の抵抗は 讃えもされず、弔われもしない 半数は疑問を抱く 半数は抱かれた疑問に疑問を抱く なあ よく考えてみたら誰も 優しくなくて はじめから分かっていたこと はじまりの唄 壊れてく世の中と手を繋いで同じ 歩幅で歩いてることに気付いたのは 令和2年3月4日午前9時9分 電車内で見たツイートやニュース 白杖の女性を押しのけたスーツ ゴミクズよりもクズ 肩をぶつけ、 我先に早足で他人のかかとを 踏みつける汚い靴 舌打つグズで溢れる 密度の高い人の渦 そんな風景が 普通ならこの 世からいなくなりたいのは当たり 前かもしれないと深く頷く 自分には恐怖と自責の念で 選べない選択 歩き出すあなたを力ずくで 地獄に引き戻す権利も資格もなく こうやってすぐ真人間ぶる 落ちない汚れは死ぬまでひた隠す 出来事と考え事で飽和状態 いつの間にか母親に発信された電話 令和2年3月30日午後9時9分 どうしても教えてほしかった 「この世の中でどう 生きていけばいい」 代わった電話口の父親からこぼれ 落ちた 「今は耐えるしかない」 はじまりの唄 はじまりの唄 今は耐えるしかない はじまりの言葉 下を向いて涙を流すお前にも 言葉より拳が 先に出てしまうお前にも 誰かを殺めてしまったお前にも 国を統制する気が 見えてこないお前にも はじまりの唄が聴こえてくる