雨が降る予報は上手く外れたけれど 汗が伝うのは 誤魔化せそうにないよな 小走りで駆け寄る 君はいつもの夏服で 「まさか期待したの?」 まさかだよ、残念だ 騒々しい声でも焦げた香りでも 全部君に掛かれば 今しかない夏に変わっていく 袖が触れ合う距離まで あと半歩どうしたら、なんて考えて 気付けば視線がぶつかる 君の頬に少しだけ 茜が差しているような 勘違いなのに鼓動が鳴り止まない あちこち忙しない君は裾を 摘みながら 「もしも汚れたらさ、面倒だし」 との事で 蝉の鳴き声から花火の音まで 全部胸に残るよ 今しかない夏だから 射的で尖る口先 たこ焼きで下がる眉 知らない表情が目まぐるしく映り 替わる まだ言えない 砕ける覚悟が無いんだ せめてもの見せ場はさっき奢った 綿菓子だけ 「ちょっと話そうよ」 喧騒から連れ出され まさかと思うのに期待値が 高まっていく 袖が触れ合う距離まで あと半歩どうしたら、なんて考えて 気付けば指が触れていた 君の目がいつもよりも 泡沫に似ているような 勘違いなのに鼓動が鳴り止まない まさか