季節さえ振り切る速度で 筆を滑らせて生きた跡を著す 「いつまでも心に残れ」と 掠れゆく文字に物語を宿して にわか雨の気配がした数刻の後 部屋で一人背をもたれて耳を 澄ませた 窓越しの地響きに 蒼く共鳴した夏を紡いでいく 君には勝てないけど 誰かの胸に刺さればそれでいいんだ 枕ならとっくに捨てたよ 手が動く内に、 ひと文字でも進めたい 気遣いも的外れだから 命の重さの話なんかしなくていいよ 下らない、ありふれた僕の話なんて にわか雨が通り過ぎて鳴りを潜めた 部屋で一人背を丸めて夢を見ている 季節さえ振り切る速度で 書き残してきた物語を並べて 「読んでみろ 僕はここにいる」 下らないなりに、 最期の日にこう言うんだ