誰もいない夜の道で 足音だけが問いかけてくる 星が見つめる先にあるのは 言葉にできない小さな光 天橋立の影が揺れる 潮の香りが心に触れる 遠くの灯台が瞬くたびに 何かが胸の奥で溶けていく 月が見ている、この夜の奥で 影が揺れる、記憶の波間に 私は歩く、行き先のない道を ただ風の声に耳を澄ませながら 文殊の森で星が踊る 夜露が草を濡らし輝く 風が連れてきた名前のない音が 心の隙間をそっと埋めていく 夜が紡ぐ秘密を聞きながら 光と影が溶け合う瞬間 私はここにいて、どこにもいない その感覚だけが確かだった 天橋立の影が消える前に 文殊の森が星を見送る 祠の上で月が微笑む 夜はただ続いていく
