祖父からの 手紙もらうも 字が読めず 予想で描く 祖母への気持ち あらすじが 埋めた大半 照れ隠し 見え隠れした 過ぎた日常 元気かな こっちはなんとか やっている 元気な返事 ここで待っている エアコンは 相も変わらず 好まない 冬は寒いが ちょうどいいから ひとりには このコタツすら 広過ぎて 伸ばした足も 行き場を失う 寝る前に テレビの方に 目をやると 暗い画面が 映した孤独 役目終え 風でなびいた 茅葺が 除夜の鐘に 耳を澄ませば 斜め上 見上げそこには あの頃の 予定で埋まる カレンダーの跡 昨年の 夏の花火に 照らされて 面影を追う 縁側の隅 爪切りが いつもの棚に 見当たらず 途方に暮れた 朝方の居間 埃っぽい アルバム開き そこにある シャッター越しの 私の世界 いつの間に 腰が曲がって 大好きな 桜見下ろす 花びら河川 障子の 開く音がして 目が覚めて 覗く茶の間 あなたはいない 横になり 一日過ごし 宵の口 湯呑茶碗から 甘酒の味 不自由と 思いながらも 手を借りる 行きたいところ 伝えてみよう いつまでも 結婚しない 孫の愚痴 心残りが 帰省する度 ペン先が 進んでいくと 思い出す あとちょっとで あなたに会える 後悔に 年老いてから 気付いても 戻れないなら 笑っていよう 半身麻痺 でも心だけ 今日だって 動き続ける 指先の様 軒下に 初夏の燕 巣を作り きっと来年も ずっとこの先も 「好きだよ」と たった一言で 色付いた 白黒写真 想いに浮かべ 思わず 「何言ってるの」と 呆れても いつも隣に あなたの笑顔 すれ違う 場所や時代 その中で すれ違わずに ありがとう、と 初恋を 百歳手前 振り返り あの日のあなたと ふと、目が合う あと、 何十年だって 話していたいどうでもいいような 話を 明日には 忘れてしまうようなそんなどうでも いいような話を あと、 何百年だって 話していたい日の当たる 縁側に腰下ろし あの日が色変え沈み始めたら 湯気がつつむ台所で ストーブの上に豚の角煮、 鍋には銀ダラの煮つけ フライパンに餃子、 お好み焼きだってある 店の前にトラック止めて石焼き 芋だって売りに来てる あと何千年あったって 話足りないけど ちょっとくらい眠くなったなら、 つづきはまた今度話すよ