南湖の波打ち際 眠れないサーフボードが 月明かりに溶かされて 液体のように揺れる 誰も乗らない夜の波は まるで睡眠薬みたい 緩やかな催眠術で 記憶を溶かしてく 柳島の防波堤 波のカウンセラーが 私の気持ち聞いては また波に変えてゆく 溶け出した想いたちは 沖まで泳いでゆく 中海岸公園で 砂浜が処方箋を 波の音で書いている 読めない文字のように それでも確かな何かが この場所では治癒して 塩の味のする風が 私を包んでゆく 夜の診察室では 波が医者になっている 海から届く声には 効能が書かれてて 私の心の傷も 少しずつ癒えてく 深夜の浜辺では 波が薬を調合し 明日の処方箋には 私の名前がある
