古川の街に 宵闇が降りて 千代の松原 縁を染める 飛騨みずめの滝 しぶきの中に 月が溶けては 虹を描く 古い町並み 格子の向こう 気配を残す 明かりたち 誰もいないのに 揺れる提灯が 夜風に乗せる 想いごと 気多若宮の 境内越しに 星空広がる キャンバスで 誰が描いたの この風景を 夜露が滲ます 水彩画 飛騨の暮らしの 伝承館で 眠る道具が 目を覚まし 昔の人々 残した手跡が 影法師する 壁の中 百年前の 窓からこぼれる 月明かりの グラデーション 時を解かして 溶け出すように 記憶が流れ 出してゆく 飛騨の匠が 削り出した 木目に刻まれた 時の跡 柱と柱の 隙間を抜けて 風が運んだ 囁き声 和ろうそくの 揺らめく光が 壁に映して 絵巻物 まだ見ぬ誰かに 語りかけてる 祖母の声みた やさしさで 通りの向こう 家々の窓に 灯る明かりが 点と線 夜空の星と 照らし合うよう 地上の星座 描いてる 朝を待つまで この場所から もう少しだけ 眺めてる 言葉にならぬ 昔語りを 夜が紡いで くれるから
