桜の息吹は未だ遠く 霜を踏みしめて歩く 朝霞が照り返して足元が覚束無い 着慣れたはずでもどこか固く 襟を整えて歩く 思い残すことばかりで爪先が 冷たくなる 少しお話しよう いつもしてるみたいに 最後の鐘が鳴れば 全てが過去に変わり忘れられるかな いつか描いた春は絵空事だと 優しい眼差しが伝えていた 上手く笑えなくて南風が沁みて 君のいない日なんか 来なくていいのに 聴き慣れた曲はどこか遠く 浮世を離れて歩く 同じ様に泣いてみれば少しは割り 切れるかな あの夏の日に牡丹に焦がれ 弾けたはずの儚い恋は 今も喉を締め付けて 陽が長くなるにつれて苦しくなる いつか描いた春は絵空事だと 隣り合わぬ君が伝えていた もしも選ぶ道を一つ違えたなら、 そんな夢を見る 「まだ好きだよ」馬鹿らしいけど 優しい眼差しもその横顔も 昼下がりの頬に南風が沁みて 桜が吹雪く頃にようやく泣けそうだ